大阪地方裁判所 昭和43年(わ)799号 判決 1968年6月17日
主文
被告人を懲役八月に処する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は
第一 昭和四三年一月三一日午後九時一七分ごろ、大阪市浪速区浪速町西四丁目三〇番地先道路(巾員約六メートル)において、呼気一リツトルにつき〇、五ミリグラムのアルコールを身体に保有し、その影響により正常な運転ができないおそれのある状態で軽四輪貨物自動車を運転し
第二 自動車運転の業務に従事していたものであるところ、右日時ころ、右自動車を運転し、右場所の北方約三二、八メートルの丁字路を右折したうえ、時速約三〇キロメートルで南進したのであるが、当時酒の酔いのため注意力が散漫になつていたのであるから、特に前方注視に努め、進路の安全を確認しながら進行し、事故の発生を防止すべき業務上の注意義務があるのに、右折後変速装置を操作した際、その切換が円滑にできなかつたため、運転席左下方の変速装置に注意を奪われ、前方注視を怠り進路の安全を確認することなく進行した過失により、おりから倉本均運転の自動二輪車が対向進行して来たことにも、自車のハンドルが右に切れていることにも気付かず、自車を右斜めに走行させ、自車右前部を右二輪車の後部右側およびその後部に同乗していた倉本重長(当時三二才)の右足に衝突させて同人を路上に転倒させ、よつて、同人に対し約三か月間の加療を要する右大腿骨骨折、膝関節損傷、前腕部挫傷の傷害を負わせ
第三 右第二のとおり交通事故を起こし、右倉本重長が負傷したかもしれないことを認識しながら
一 直ちに自車の運転を停止して同人を救護する措置を講ぜず
二 直ちにもよりの警察署の警察官に対し右事故発生の日時、場所等法定の事項を報告しなかつた
ものである。
(証拠の標目)(省略)
(法令の適用)
判示第一の所為について 道路交通法六五条、同法施行令二六条の二、同法一一七条の二、一号(懲役刑選択)
判示第二の所為について 昭和四三年法律第六一号による改正前の刑法二一一条前段、罰金等臨時措置法三条一項一号(禁錮刑選択)
判示第三の一の所為について 道路交通法七二条一項前段、一一七条(懲役刑選択)
判示第三の二の所為について 同法七二条一項後段、一一九条一項一〇号(懲役刑選択)
併合罪の加重について 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(最も重い判示第三の一の罪の刑に法定加重)
訴訟費用について 刑事訴訟法一八一条一項本文。